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目に見えていないだけで、私たちの身の回りには無数の微生物がいます。そしてこの微生物のチカラを人は古くから食べものに、野菜づくりに利用してきました。
微生物が有機物を人にとって有益なものに分解することを「発酵」といいます。この発酵を利用した食べものは約6千年も前からすでにあったと言われています。
また、土づくりを基本とした野菜づくりでは、森の中で微生物が落ち葉や動物の死骸などを分解し、栄養分を生み出す「腐植」を畑で再現しています。これは化学肥料が登場するまで当たり前のように行われてきた昔ながらの農業の在り方です。
今回は微生物のチカラに迫ります。
発酵食品 ~お酢~
お酢は、酒が偶然変化してできたものが起源といわれ、でんぷんや糖を含んだ農作物からできた酒を酢酸菌で発酵させたものです。酢酸菌がアルコールの主成分であるエタノールに働きかけて酢酸を生み、最後にはエタノールがほぼなくなってお酢になります。
お酢に必要な三要素
- アルコール 穀物や果実からできたお酒です。
- 酢酸菌 長さ1~4μmの細長い菌です。
- 酸素 酢酸菌は数少ない好気性の菌です。
製造時の発酵方法
製造方法には「静置発酵法」と「通気法」の2種類あり、コープ自然派がすすめているのは「静置発酵法」のお酢です。時間も手間もかかりますが深みのある味わいに仕上がります。
「静置発酵法」
タンク表面に幕を張った酢酸菌がコクや香りをお酢に閉じ込めながらゆっくり発酵を行います。
「通気法」
材料を入れたタンクに空気を送って攪拌し発酵を素早く済ませます。
すし酢 ~時間をかけた静置発酵~
飯尾醸造は、創業時から変わらず静置発酵法だけで酢を造ってきました。一般的な酢の100倍も時間のかかる気長な製法です。『富士すし酢』の原料は、京都・丹後で農薬を使わずに栽培した米だけで作った『純米富士酢』に粗糖(きび糖)、蜂蜜、天然塩とシンプル。まろやかな酢だからこそ、砂糖や塩を減らせます。蜂蜜によって酢飯が固くなりにくく、翌日になっても酢が飛びにくいのが特徴です。
野菜の甘酢漬け(ピクルス)、オイルを加えてサラダのドレッシングなど、いろんなお料理にお使いください。
飯尾醸造 飯尾彰浩
富士すし酢
混ぜるだけで”お寿司屋さんのすし飯”ができあがります。
料理酒 ~発酵で栄養素を生成~
日本酒はお米とお水が原料というシンプルな飲みものですが、微生物の力で発酵することで、アミノ酸など身体にいい栄養素を生成することが分かっています。松本酒造では、原料のお米と伏見のお水を使って蔵のスタッフが丁寧な作業と緻密な温度管理で仕上げています。
「飲んでもおいしい料理酒純米」は食材を柔らかくするだけでなく、素材本来の旨みやコクを引き出します。またこの商品は、お米本来の美味しさを活かした純米酒となっておりますので、食事と一緒に楽しんでいただけたらと思っています。
松本酒造 内藤千晶
飲んでもおいしい料理酒純米
素材の旨みを引き出すため、有機酸・アミノ酸を通常の酒よりも多く含みます。
キムチ ~植物性乳酸菌を含む~
キムチに含まれている乳酸菌は「植物性乳酸菌」で、胃酸に強く生きたまま腸に届く割合が高いため、腸の働きや免疫力を高める働きに優れていると言われています。
浅漬けのキムチでも発酵食品なのだろうか、というお声もあるのですが、魚谷キムチではすでに発酵させたものを原料に使用している為、浅漬けキムチでも十分発酵食品と言えるものです。「ファミリー白菜キムチ」に使用するイカの塩辛(イカの魚醤)は、獲れたてのスルメイカを自社でさばき、塩漬けしてから熟成させたものです。旨みたっぷりのイカの魚醤は、「ファミリー白菜キムチ」特有の柔らかい甘みを引き出してくれます。キムチで代謝をアップさせて暑い夏を乗り越えましょう。
魚谷キムチ 魚谷美蘭
ファミリー白菜キムチ
辛さひかえめで食べやすい、こってりした味わいです。
植物にとって大切な「アミノ酸」と「炭水化物」
植物の細胞は人と同じで数種類の「アミノ酸」を組み合わせたタンパク質でつくられています。植物は光合成により「炭水化物」をつくり、それをエネルギー源としてからだ(繊維や細胞)をつくっています。
野菜づくりでは「アミノ酸」と「炭水化物」を効率よく使えるように育てることが大切です。植物は「アミノ酸」を根から直接吸収することができます。また微生物のチカラを利用し、「炭水化物」を根から吸収できる大きさに分解・合成して、からだに蓄えることができます。
ポイント
- 酵母菌が炭素ガスを出して土がフカフカに!
- 微生物のチカラで根から吸収できる酢酸に分解・合成!
さやいんげん ~堆肥の発酵を気に掛ける~
先日、皆さんにお届けする秋のさやいんげんの施肥をしました。堆肥が良い感じの発酵をしているのを確認すると、ホッとします。うちの場合、2種類の特性の違う堆肥を使い分けています。放線菌、納豆菌、酵母菌、乳酸菌…、場面によって微生物を使い分けています。
いんげんは、「茹で」よりも「焼き」がおすすめ。フライパンでじっくり焼いて、塩コショウのみ。子どもにも人気です。
のらくら農場 萩原紀行
さやいんげん
ゆでるとほのかな甘みが漂うさやいんげん。
オクラ ~土中の豊かさが作物を育てる~
土中に微生物やミミズ等、生きものが増えると健康なオクラが育ちます。生きもののエサになる堆肥は、未熟、中熟、完熟に分けることができ、生きものを増やすには未熟堆肥をすき込み、土ごと発酵します。時間はかかりますが、排水性がよくなり養分の吸収もよくなり、二酸化炭素を土中に溜めることもできます。
健康な美味しいオクラを食べ、食物繊維を多くとり善玉腸内細菌を増やしましょう。
阿波農産 浜田孝俊
オクラ
オクラのネバネバ成分は食物繊維で、βーカロテンやカルシウムも豊富です。
有機ピーマン ~微生物は縁の下の力持ち~
おいしく元気な有機野菜を育てるには、微生物達の働きなしでは考えられません。畑には、微生物が有機物を分解してつくった、アミノ酸肥料をまきます。さらに畑の環境をみてバチルス菌、放線菌、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌達に畑に住んでもらい、畑でも発酵してもらい、酵素やアミノ酸をつくりだしてもらっています。抗菌作用、抗菌物質もつくりだしてくれるので病気や害虫から守ってくれる存在です。畑には欠かせない力持ちです。
鳥越靖基
有機ピーマン
苦みが少なく甘みがあるジューシーなピーマン。
公開:2021年7月26日
商品案内19号[2021年8月2回]掲載